Nrf2-小Maf二量体DNA結合配列の多様性 |
Nrf2はCNCファミリーに属する転写因子で、様々な解毒・生体防御遺伝子の発現を制御しています。転写因子とは標的遺伝子の近傍に存在する特徴的な塩基配列(シス配列と呼びます)に結合することで、遺伝子発現のON/OFFを制御するタンパク質です。Nrf2は、小Maf群因子と呼ばれる別のタンパク質と二量体を形成することでシス配列に結合します。 Nrf2-小Maf二量体が認識するシス配列は抗酸化剤応答配列 (antioxidant response element; ARE) /親電子性物質応答配列(electrophile response element; EpRE)と呼ばれています。またこれらの配列は、他のCNC-小Maf二量体が認識するシス配列と良く似ているため、CNC-小Maf結合配列 (CNC-sMaf binding element; CsMBE)とも呼ばれます。 私たちはこれまで、Nrf2のシス配列認識部位に特殊なアミノ酸変異を導入することで、Nrf2がCsMBEを特異的に認識することが標的遺伝子の発現制御において重要であることを示してきました。また近年のヒトゲノム研究の進展により、CsMBEに存在する遺伝的バリアントが標的遺伝子の発現量に影響を及ぼす事例が数多く報告されています。これらの知見は、ヒト集団におけるCsMBEの多様性が、一人ひとりのNrf2標的遺伝子発現の強弱、ひいては表現型の違いの一端を担っている可能性を示していると考えられます。 |
参考文献 1. Otsuki A, Yamamoto M. Cis-element architecture of Nrf2-sMaf heterodimer binding sites and its relation to diseases. Arch Pharm Res. 43:275-285 (2020) 2. 大槻晃史, 山本雅之. CNC-小Maf二量体による特殊なシス配列認識がつかさどる多様な生理的機能. 生化学. 89-2 (2017) 3. Otsuki A, Suzuki M, Katsuoka F, Tsuchida K, Suda H, Morita M, Shimizu R, Yamamoto M. Unique cistrome defined as CsMBE is strictly required for Nrf2-sMaf heterodimer function in cytoprotection. Free Radic Biol Med. 91:45-57 (2016) 4. Suzuki T, Shibata T, Takaya K, Shiraishi K, Kohno T, Kunitoh H, Tsuta K, Furuta K, Goto K, Hosoda F, Sakamoto H, Motohashi H, Yamamoto M. Regulatory nexus of synthesis and degradation deciphers cellular Nrf2 expression levels. Mol Cell Biol. 33:2402-12 (2013) 5. Kimura M, Yamamoto T, Zhang J, Itoh K, Kyo M, Kamiya T, Aburatani H, Katsuoka F, Kurokawa H, Tanaka T, Motohashi H, Yamamoto M. Molecular |
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